[ PROJECT 06 ]

新しい世界に行くための、
新しいエネルギーの使い方を探し求めて。

2015年、159の国と地域が「パリ協定」を採択。2050年の脱炭素社会の実現に向け、国や産業の壁を越えた取り組みが始まっている。気候変動をはじめとした数々の環境問題に直面している今、エネルギー会社にできることとは一体何か。この問いに答えるべく、前例のないプロジェクトに挑んだ男たちがいた。

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PROJECT MEMBER

    • 中部電力ミライズ(株)
    • 長野営業本部 法人営業部

    石井 竜彦

    • 1995年度入社
    • 中部電力ミライズコネクト(株)出向

    江藤 正視

    • 2007年度入社
    • 中部電力ミライズ(株)
    • 長野営業本部 法人営業部

    草分 剛瑠

    • 2016年度入社
STORY 01<概要・メンバー・発端>

期待薄とされた中部電力の技術力。
ここからの逆転劇はあり得るのか

長野県に本社を置く、日本を代表する電機メーカーがある。本社近くの巨大な工場では多種多様な生産設備が稼働しており、消費電力も膨大だ。

エネルギーの供給のみならず、省エネサポートなどによる効率的なエネルギー活用を提供する「エネルギーソリューションサービス」を展開する中部電力ミライズが、このグローバルメーカーにどのような提案を行い、どのような成果を得たのか。その顛末をご紹介する。

■営業担当の石井「お役に立ちたい。しかし一体我々に何ができるのか?」

2018年、営業担当・石井は悩んでいた。電力の供給だけでなく、高い付加価値をもつ独自サービスで関係性強化を図る。それが電力自由化後の熾烈な競争を勝ち抜く術だと考えていたが、ことが思うように運んでいなかったからだ。

「これまでに多くのお客さまから高い評価を得ていたこともあり、私はこのお客さまにもエネルギーソリューションサービスを提案したいと考えたのです。しかし、お客さまは昔から自社の省エネに熱心に取り組んできた企業風土があります。凡庸な提案であればご満足いただけないと思いました。経営課題の解決に向け、どのような内容であれば当社がお役に立てるのか、その道筋を描けず悩んでいました」

■客先出向の草分「現場の中からしか見えなかった一筋の光明」

同じ時期、偶然にもこの工場に出向していた男がいた。入社3年目の草分だ。
「出向という形での現場研修だったのですが、研修の合間を縫って工場の中を見せていただきました。その結果、『設備の最適化や運用方法の見直しなどを行えば、さらに高効率なエネルギー利用が実現できる可能性があるのではないか』と感じました。その実現性を検証するためには詳細な現状調査と分析が必須ですが、専門的な知見が求められますし、お客さまも事業活動と並行しながら人員を割くにはそれなりの手間がかかるはずです。これは我々にもできることがあるのではないかと一筋の希望が見えました」

■技術担当の江藤「想定以上の大規模な提案に」

草分の調査結果をお客さまに伝えたところ、「より詳細な調査を」との要望があった。ここからの技術的なアプローチを担当したのがソリューション営業の江藤だ。具体的な解決策の立案は、百戦錬磨の彼に託された。

「大きな工場ですから、生産ラインもかなりの数があります。我々は10名ほどのチームを組み、それぞれの工程ごとに丸1~2日をかけて詳細に調査しました。その内容を踏まえ、現状分析と省エネのアイデアを洗い出したところ、想定をはるかに超える規模の省エネ・省コスト提案になったんです」

この提案を受けて、お客さまも本格的に動き出した。

STORY 02<提案・実施>

7,000tのCO₂削減、2億円の省コスト。
想像を超えた提案内容に会場がざわつく

2019年5月、初回の報告会は担当者レベルのささやかなものになる。
・・・はずだった。
しかし、いざふたを開けてみれば、役員や各部門のトップ、他の事業所からも希望者が押し寄せ、参加者は数十人に膨れ上がっていた。それにあわせ会場も小さな会議室から講堂のような広い会議室に変更された。

「ちょうどその時期、お客さまが大規模なCO₂削減宣言を打ち出しました。『具体策どうする?』と社内で検討が始まったタイミングで、エネルギー課題に対する関心が非常に高かったことも追い風になりましたね」(石井)

■予定外の規模、想定外の反響

思わぬ熱気に気おされながら登壇した江藤は「こんな大規模なプレゼンになるなんて聞いてなかった」と笑う。
「空調など基礎的な設備から、各生産設備に至る工場内すべてのエリアで省エネを図り、年間およそ7,000tのCO₂削減、2億円のコストダウンを実現するという提案でした。会議がはじまった当初は『そんなこと本当にできるのか』というムードだったのが、私が詳細を語るにつれて『これはいいぞ』と変わっていくのがわかりました」(江藤)

江藤とともに報告会に同席した草分。現場からの期待感を感じたという。
「我々の提案に対して質疑が相次ぎ、『ぜひやりたい』『この先も一緒に詳細検討を続けてほしい』という声が上がりました。当社の知見と技術力を認めていただけた瞬間でしたから、非常にうれしかったですね」(草分)

一連の省エネ活動が始まったのは、この報告会からわずか1ヵ月後。このスパンの短さを見ても、この提案がいかに高く評価されていたのかがわかる。

■設備の運用改善で、年6,000万円のコストダウン

報告会の後、月2回の定例会を設け細部を検討することになる。各部門の担当者たちと現場の実態を細かく確認しながら、実施計画の微調整を重ねていった。

「大がかりな設備更新が必要な部分は、じっくり時間をかける必要があります。そこでまずは設備の運用を変えるだけのものなど、手が付けやすい部分からとりかかりました。結果、設備投資を必要としない省エネの効果として、年に6,000万円のコストダウンを実現しています。特に排ガスボイラは、運用変更だけで年に1,000万円のコストダウンにつながることもあり、真っ先にはじめた部分の一つです」(江藤)

■外部の人間はまず入れないクリーンルームも任される

現在も続く改善活動の中で、特筆すべきなのは半導体製品の製造に使われるクリーンルーム内の設備を任されたこと。
「クリーンルームの省エネは異例です。たった一つのホコリも許されない環境ですし、コア技術の粋が集まる現場ですから、外部の人間は普通入れないんです。そこを任されたことも、我々に対する期待の表れだと受け取っています」(草分)

この活動は個社の経営課題の解決だけにとどまらず、やがて行政を巻き込んだ新しい地域活性策につながっていく。

STORY 03<信州Green電源拡大プロジェクト>

草の根の省エネコンサル活動は、
やがて地域社会に広がっていく

今回の取り組みでもう一本の柱となるのが、再生可能エネルギー活用による脱炭素である。

世界各地に拠点を持つ電機メーカーでは、2023年に国内外すべての拠点をCO₂フリー化させることを宣言している。当時はこれに先立つ形で、2021年度中の国内全拠点CO₂フリー化を目指していた。

一方の長野県は、2019年に「気候危機突破プロジェクト」をスタート。県内の最終エネルギー消費量の7割削減や、再生可能エネルギーの生産量を3倍にするなど、2050年までの脱炭素社会の実現を目指す計画を動かしていた。

お客さまである電機メーカーと長野県、そして新しい課題解決策を模索する中部電力ミライズ。この3者の思惑が一致し2021年に立ち上げられたのが「信州Green電源拡大プロジェクト」だ。

■省エネでねん出した原資で、CO2フリー化を実現

ベースになったのは中部電力ミライズの「信州Greenでんき」という商品。長野県が運営する公営水力発電所のCO₂フリー電気を購入し、個人・法人を問わず広く販売することで、脱炭素社会の実現やエネルギーの地産地消推進、地域経済の活性化を図るというものだ。

この商品を、お客さまである電機メーカーにつなげて規模を拡大させようというのが今回の取り組みだ。県内に複数の生産拠点を持つ企業がCO₂フリーになれば、長野県が目指す姿に一歩近づく。課題は企業側の資金面だったが、そこを今回の省エネプロジェクトで突破して見せたのだ。

「お客さまは2017年から『信州Greenでんき』の一部利用を開始していましたが、この使用量を増やしたいと考えていました。ただ、どうしても一般的な電源よりも電気料金は割高になります。そこで今回の省エネサービスでまず消費電力を削減し、原資をねん出。それをCO₂フリー電気の購入資金にあてるという、新しいモデルの構築につなげたのです」(江藤)

■企業価値向上のための記者会見

県内拠点での電気のCO₂フリー化達成という成果を、お客さまの企業価値向上につなげたい。その想いを抱いていた石井は、世の中に広く周知するための記者会見をセッティングした。2021年5月のことだ。

「会見には長野県知事にも出席いただき、その模様はテレビのニュース番組や新聞各紙で取り上げられました。この会見の翌日、長野県内のさまざまな企業からお問い合わせが相次ぎ、『当社もぜひ再エネを導入したい』『うちも』と大きな反響が寄せられました」(石井)

「このお客さまの凄さを改めて感じるのは、やはり取り組みの速さです。今でこそCO₂フリー電気は引っ張りだこですが、まだほとんどの企業が関心を持っていない2017年から導入をはじめていますから。そういったスピード感に常に応えられる会社でいたいですね」(草分)

STORY 04<成果と未来>

エネルギーの未来を変えるのは、
社員一人ひとりの技量と想い

■期待以上の成果を出し、お客さまとの関係強化に成功

これら一連の省エネコンサル活動は、その後電機メーカーの社内改善大会で最高賞に輝いた。自社の生産現場をよく知る顧客と、省エネ設計に詳しい中部電力ミライズ。双方の強みをうまく掛け合わせた活動が高く評価されたという。

「省エネ活動を我々が引き受けることでお客さまはコア業務に専念できるようになり、労働環境の改善につながった点も評価されました。活動中に現場の方から『本当に助かる、ありがとう』と何度かおっしゃっていただけて、数字以上に喜んでいただけたのではないかという実感があります」(草分)

お客さまとの関係性に変化はあったのだろうか。
「もちろんです。短期的な目線の省エネ活動だけでなく、中長期的な視点で一緒に課題を解決していく関係に変わってきています。最近は『中電さんなら何かやってくれるんじゃないか』と他拠点からも相談が寄せられることが増え、国内のさまざまな拠点に今回の取り組みを水平展開しています。有難いことに2027年ぐらいまでは予定が埋まっている状況です。」(石井)

手探りで始めたプロジェクト。成功した要因はどこにあるのか。
「一つは現場力だと思います。愛知県なら自動車関連メーカー、三重県なら化学プラントや素材メーカーなどさまざま産業で培ってきた知見が社内で蓄積・共有されていて、それを他業種に応用できたということですね。現場で鍛えられたノウハウがあったからこそ、今回のチャンスを逃さずモノにできたのだと思います」(江藤)

■このプロジェクトが手繰り寄せる未来とは

収益化が難しい省エネ・省CO₂の領域で、お客さまとの間にWin-Winとなる新たなビジネスモデルを確立したことは今回の大きな成果といえる。最後にメンバーに今後の抱負を聞いた。

「CO₂フリーの電源には限りがありますので、今後は再エネ電気をお客さま自ら生み出す『創エネ』の提案にも注力していきます。政府が推進するRE100(※)などの目標も見据えつつ、お客さまのエネルギーにまつわる経営課題を解決していきたいですね」(石井)

「はじめは頂上が見えない山登りのようでしたが、周囲の方々のサポートもあって大きな成果を得ることができました。愚直に、誠実にやれば結果は必ずついてくる。今回得たこの教訓を活かして、2050年の脱炭素社会の実現というさらに大きな山に向け、これからも一歩一歩進んでいきたいと思います」(草分)

「これから先、ひょっとしたら今回の『省エネで原資をねん出し、CO₂フリー電源に切り替えていく』というモデルが中部全域に広がって、エネルギー業界を、さらには世の中を変えることにつながるかもしれない。ニーズは間違いなくあるので、これをもっと広げていきたいですね。このような活動は我々エネルギー会社の使命ともいえますし、さまざまな経験ができるので特に若い人ほど面白い仕事だと思います」(江藤)

※RE100:企業が自らの事業で使う電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的な取り組み
※本記事は2022年1月取材時点の情報です。

既に2,000件のソリューション実績 既に2,000件のソリューション実績
既に2,000件のソリューション実績

中部電力ミライズでは、これまでにさまざまなソリューションサービスを提供してきました。省エネ・省CO₂にはじまり、災害時のレジリエンスを高めるBCP対応、グローバル拠点サポート、デジタル化によるエネルギーマネジメントに至るまで、その実績は既に2,000件を超えています。ここで得られたデータやノウハウが、他にはないサービスの創出を可能としています。