[ PROJECT 02 ]

再生可能エネルギーや
次世代モビリティを
普及させるための
新サービスを開発せよ!

震災、電力自由化、発送電分離・・・。この10年でエネルギー業界を取り巻く環境は大きく変わりました。変わりゆく時代の中、中部電力がこれからも持続的な成長を遂げるためのキーワードに「再生可能エネルギー」と「EV(電気自動車)」があります。これら新たな市場を切り開くサービス開発プロジェクトを追いました。

[ PROJECT 01 ] [ PROJECT 01 ]

PROJECT MEMBER

    • 中部電力ミライズ株式会社
    • 事業戦略本部 事業開発グループ

    伊藤 健太

    • 2010年入社
    • 法学部卒
STORY 01

始まった「卒FIT」。
中部電力には何ができるか

「固定価格買取制度」とは、再生可能エネルギー(以下再エネ)の普及を目指し、2012年に国が始めた制度(※)で 、一般的に「FIT(Feed-in-tariff)」などと呼称される。FITは、太陽光パネルや風力発電機などで発電された再エネ電気 を、電力会社が国の定めた価格で一定期間買い取り、買い取りに要した費用を国民が負担する制度だ。再エネは、従来の火力発電などに比べると、どうしても発電コストが高くなってしまう。そのため、同制度を設けることで、再エネの普及を支援している。

FITの買取期間は、再エネ電源の種別や設備容量によって異なるが、2019年11月から、順次、買取期間の満了を迎えていく。これは一般的に「卒FIT」と呼ばれており、中部電力は卒FITを迎える顧客向けの対応 ―卒FIT顧客から引き続き再エネ電気を買い取るプラン(卒FITサービス)の開発― を迫られていた。

伊藤が事業開発グループに配属されたのは、その矢先のことだった。2018年の夏のことである。上司から「今日からこれを頼む」と卒FITに関する資料を渡された伊藤は、内心「卒FIT?!」と声をあげた。2010年の入社後、電気料金の値上げ対応や電力自由化に向けた料金プラン・販売戦略の策定などを担当した後、他企業に出向してマーケティング業務に従事。戻ってきたばかりの伊藤には未知の領域だった。自由化された市場において、並み居るライバルたちに負けない卒FITサービスをいかに開発するか。伊藤はこれまでのキャリアで培った総合力が問われる局面に、いきなり立たされた。

卒FITなどの再エネ電気には、「発電時にCO₂を排出しない」という特別な価値がある。これを「環境価値」と呼ぶ。「SDGs・RE100等の盛り上がりを踏まえると、環境価値へのニーズは、今後高まってくるはず。こうしたニーズにお応えするためにも、魅力的な卒FITサービスの提供を通じて、より多くの環境価値を集めなければと考えていました。競合他社も動き始めたばかりで、どんな出方をしてくるのかまったく読めない中、サービスの検討をスタートしました」(伊藤)

※前身の「余剰電力買取制度」は2009年に開始。余剰電力買取制度の対象者については、2012年以降も「固定価格買取制度」のもとで買い取りを継続することとなった。

STORY 02

巨大プロジェクトに、
チームプレーで挑む

事業開発グループは約20名のグループで、①新サービス(IoT・卒FIT・EV等)担当、②太陽光・エネルギーマネジメント事業担当、③地域・自治体戦略担当、④IT戦略担当、 の4チームに分かれている。各チームは、おおよそ「チームリーダー(課長)+2~4名のメンバー」で構成されており、メンバーはそれぞれ異なる開発テーマを持って動く。伊藤は①新サービス(IoT・卒FIT・EV等)担当チームに所属しており、卒FITとEV関連サービスを担当。同じチームの他のメンバーはスマートフォンアプリを通じた家電操作サービス「ここリモ」や子ども見守りサービス「どこニャン」、その他の新サービスの開発をそれぞれ担当している。そして、これらすべてのプロジェクトをチームリーダーがマネジメントするという役割分担だ。

仕事の進め方は、メンバーの裁量に任されている部分が多く、チームリーダーに適宜報告・相談しながら、担当業務のPDCA(計画から実行、検証、改善までのサイクル)を回している。メンバー間は普段から仲が良く、お互い相談し合うこともある。チームリーダーとの関係も“上司と部下”といった封建的なものというより、よりオープンな、“一緒に考える仲間”といったものに近く、気軽に声がかけられる環境だ。「そういう環境だったこともあり、仕事で行き詰まりを感じるようなことはありませんでした」(伊藤)

卒FITサービスの開発は、社内のさまざまな部門を横断する一大プロジェクトとなった。伊藤は、買取価格を検討する戦略グループ・需給運用部、プロモーションを担当するお客さま営業グループ・WEBサービスグループ、法律面をチェックする法務グループ、会計面をチェックする経理センター、サービスリリース後の業務運用を担うお客さまサービスグループ、料金計算等のシステム構築を担うシステムグループなどなど、複数の部署と一体的に検討を進めながら、プロジェクトの取りまとめを行った。

STORY 03

企画立案から顧客折衝、
プロモーション、システム開発まで

より多くの卒FIT顧客から選ばれるために、最も重要なことは「シンプルで、かつ幅広いニーズに対応できるサービスラインナップを揃えること」だと伊藤は考えていた。

そうしたさなか、“全国規模の総合小売業者(A社)が卒FIT電気に関心を寄せている”との情報が法人営業担当者から入った。同社が発行するポイントは買い物などに利用することができるため人気が高い。そこでA社に対して「卒FIT顧客から集めた電気をA社にお届けし、卒FIT顧客にはA社の発行するポイントを進呈するプラン」を提案した。協議はトントン拍子に進んだ。「環境価値にはニーズがあると再確認しました」(伊藤)

その他にも、大手EC事業者との提携により「ギフト券を進呈するプラン」や蓄電池の機能を参考にした「時間帯によって買取価格が変動するプラン」なども考案。マーケットの状況などを見ながら買取価格の調整を行い、最終的には5種類のサービスラインナップを整えた。

ラインナップの次は、サービスを顧客に届けるためのプロモーションだ。どの媒体を使って、いつ、どのようにアプローチするべきか検討したうえで、WEBサイトやメールマガジン、ダイレクトメールなどを、メッセージやデザインにこだわりながら作成した。

並行して、システム開発と業務運用の構築も進めた。中部電力の料金計算システムは複雑かつ巨大。一部に手を入れるだけでも莫大な時間とコストがかかる。サービスラインナップの拡大がそこに輪をかけた。そこで、システム開発を一部断念し、当面の間、業務運用チームにおいて、人の手で対応してもらうこととなった。「システムチームと業務運用チームには無理をお願いしてばかり。今回も申し訳ないと思いながら対応してもらいました」(伊藤)

他にも多くの課題や調整があったが、プロジェクトを通じて、伊藤は“企画・マーケティング能力”を磨くことができたという。「企画・マーケティング能力は、これからの中部電力に必要不可欠な力です。実体験を通じて、これを蓄積できたことはとても大きかったと思います」と語った。

STORY 04

来るべき次世代のモビリティ社会を
支える新サービスを

プロジェクト開始からおよそ1年後の2019年秋、サービスは無事リリースされた。「選べる」という価値で競合に勝つ、という 戦略は的中した。まだリリース直後ではあるが、契約数は想定を上回るペースで推移している。「数字を見て少しホッとしました。これまで、検討の過程で迷うことがあれば『お客さま起点』に立ち返り、自分で設問を考えたアンケートをネットや街角で実施するなどしながら、幅広い層の消費者心理を把握するよう努めました。そうした工夫も結果に繋がっているのだと思います」(伊藤)

伊藤はその他にも、太陽光発電設備を初期費用0円で設置できるサービスの開発や地元のプロサッカークラブを巻き込んだ再エネ普及イベント にも参加。そして現在は来るべきEV社会を念頭においたサービス開発に取り組んでいる。

「気候変動問題への対応などの観点から、今後、EVは大きく普及することが予想されています。こうした機運をとらまえて、EVの導入をサポートするサービスやEVを活用した新たなサービスを展開していくことで、脱炭素社会の実現に寄与するとともに、お客さまやコミュニティが抱える様々な社会課題の解決を図っていきたいと考えています。 詳しいプロジェクト内容はまだお話しできませんが、これまでの経験を生かして挑戦中です」(伊藤)

エネルギーを取り巻く環境が大きく変わる中、中部電力は、持続的な成長を遂げるための「新たな価値の創出」に挑み続けている。

「これまで、中部電力は、電気の販売を通じて成長を続けてきました。しかしながら、外部環境が変わり競争も激化していく中においては、新たな価値を創出することで、電気という商品の差別化を図るとともに、収益をあげていかなければなりません。そういう意味では、事業開発グループの仕事は、この会社の未来を左右するものと言っても過言ではなく、非常にやりがいを感じています。今後も、様々なプロジェクトに挑戦し、会社も自身も成長していきたいです 」(伊藤)

※本文中の部署名などの表記は取材当時(2020年1月)のものです。

CO₂を出さないサッカースタジアム CO₂を出さないサッカースタジアム
CO₂を出さないサッカースタジアム

2019年夏、豊田市にあるサッカースタジアムで「CO₂フリーチャレンジ」を開催。これは観戦に訪れたサポーターのみなさんとともに、試合会場で使用する電力をすべて再エネにするというイベントです。自治体も巻き込みながら、再エネへの関心を高める取り組みとして、多くのメディアで紹介されました。