[ PROJECT 04 ]

100年先も、ここから
電気を送り届ける。
清内路水力発電所
建設プロジェクト。

長野県下伊那郡阿智村に建設される、清内路(せいないじ)水力発電所。2022年6月の運転開始に向け、関係者一丸となって工事を進めています。プロジェクト成功に向けて挑戦を続ける、3名の技術者の取り組みをご紹介します。

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PROJECT MEMBER

    • 中部電力株式会社 再生可能エネルギーカンパニー 飯田水力センター
    • 平岡水力管理所

    三沢 剛

    • 1996年入社
    • 土木科 卒業
    • 中部電力株式会社 再生可能エネルギーカンパニー 事業推進部
    • 水力開発グループ

    南波 徹

    • 2012年入社
    • 工学研究科 電気電子工学専攻 卒業
    • 中部電力株式会社 再生可能エネルギーカンパニー
    • 清内路水力建設所

    渡邉 悠介

    • 2017年入社
    • 工学研究科 都市社会工学専攻 卒業
STORY 01

約20年ぶりに建設される、
流れ込み式の水力発電所

豊かな自然を、暮らしのエネルギーへ。

南信州最大の温泉地、昼神温泉を左手に見ながら国道256号を上っていくと、「はなもも街道」と呼ばれる名所に差しかかる。春になると5,000本もの花桃が咲く、美しい峠道。そこから細い山道に入ると、やがて勢いのある川音が聞こえてくる。天竜川流域の黒川と小黒川。古くから地域の人々に恵みをもたらしてきた川の水を、暮らしのエネルギーとして活かすための取り組みが、今この地で進められている。2022年6月の運転開始に向けて進められているのが、清内路水力発電所の建設。この発電所は、中部電力が約20年ぶりに建設する流れ込み式(ダムのように河川の水を貯めず、そのまま発電所に引き込む方式)の水力発電所である。

黒川と小黒川の上流に設けられるのが、「えん堤」と呼ばれる取水用の施設だ。黒川上流のえん堤で取水した後、小黒川えん堤でさらに注水し、発電所に水を引き込む。2か所のえん堤と総延長約5.1kmの導水路トンネル、水圧管路(発電用水を水車発電機に流し込むための管路)、発電所などの工事を行い、最大出力5,600kWの発電設備を稼働させることが、プロジェクトの全体像である。
建設工事の着工を翌年に控えた2017年の8月からプロジェクトに加わったのが、水力開発グループの南波徹である。発電所の電気機器や制御装置の設計、発注、現場管理などの業務を担当することになった。

プロジェクトは、手探りで一歩ずつ進みだす。

「私が配属されたのは、大まかな概略設計が終わったタイミングです。そこから基本設計や工事のための実施設計を進めることになりました。水力発電所の新設工事に携わった経験はなかったので、最初は手さぐりの状態からスタートしました」(南波)

えん堤や水槽の位置、発電所の位置といった情報をもとに、水の落差と流量を計算。発電機に求められるスペックを導き出し、各種機器の設計や発電所のレイアウトなどを進めていった。また、有効落差を最大限に活用するため、発電機室には約30メートルの立坑型半地下式の構造が採用されることになった。 そして、この計画・設計段階でもっとも大きな課題となったのが、事業性の壁をクリアすること。つまり、この発電所を事業として採算の取れるものにすることだった。

STORY 02

大きな挑戦となる、
デフレクタ放流と
FRP(M)管の採用

「採算性」という課題への挑戦。

「通常の方法で建設した場合、採算の確保が難しいことが分かっていました。そこで検討を重ね、採用されることになったのが、デフレクタ放流という方式です」(南波)

デフレクタ放流方式の特徴は、緊急時に使われる余水路を省略できることだ。緊急時に水車発電機を停止する際、一般には水車の入口調整弁を全閉して水流を止める。しかしこの場合、行き場を失った水を河川に逃がすために余水路というルートを別途設ける必要がある。一方、今回採用されたデフレクタ放流の仕組みは、デフレクタという板で水の流れを変え、水車に水が当たらないようにするというもの。ジェット水をそのまま下流に流せるため余水路を設ける必要がなくなり、建設コストの低減が可能になる。 ただし、中部電力が過去に建設した発電所の中でも、この方式が採用された前例はまだ少ない。そのため、異常発生時に考えられるリスクやその際の制御方法を一から洗い出す必要があった。想定されるケースごとに、緊急時の対策をまとめていった。

計画・設計段階を経て建設工事へ。

リスク回避の方法をまとめる上で重要になるのが、土木設備の構成や保守担当者の動きなど、細部にわたる知識である。南波は各種設備の設計者や保守担当者と何度もディスカッションを重ね、運転開始後の保守のしやすさなどを加味しながら設計の完成度を高めていった。
そうした計画・設計段階を経て、2018年5月にいよいよ建設工事がスタート。中部電力の施工担当者や工事請負会社が現場に入り、工事が進められていった。そんな中、2019年の8月からプロジェクトに加わったのが、入社3年目の渡邉悠介である。主にえん堤や導水路トンネル工事の現場管理を担当することになった。

「私の仕事は、土木工事の担当者として現場の施工管理を行うことです。運転開始に向けて遅滞なく安全に工事を進めていくことが私の役割になります。また、それだけではなく構造物の設計も行っています。その中の一つとして取り組んだのが、水圧管路の検討・設計業務です。水圧管路の材料として、当社ではこれまでSM管(鉄管)が使われてきましたが、コストや工期などの面で有利であることから今回の現場ではFRP(M)管(強化プラスチック複合管)が採用されることになりました。施工方法などの詳細な検討については、実際の現場を見ながら進めていきました」(渡邉)

STORY 03

新しいことへの挑戦を
後押ししてくれる
風土が生み出すもの

前例のない施工に、検討を重ね続ける。

水圧管路の材料としてFRP(M)管を使うメリットの一つは、コストの安さである。また、溶接での施工を必要とする鉄管に比べて施工が容易なことも大きなメリットだ。中部電力が大きな水圧のかかる発電所の水圧管路にFRP(M)管を採用した前例はなかったが、コストの削減が課題となる中、延長約900mの水圧管路のうち約700mにFRP(M)管が使用されることになった。
しかし当然のことながら、前例のないことを行う難しさもある。本発電所の水圧管路は尾根に沿って設置するため施工ヤードが非常に狭い箇所があり、施工中FRP(M)管上を重機で横断する必要があった。そのため、施工中に加わる重機・土・雪荷重を組み合わせて構造計算を行い、横断可能な範囲を極力限定した上で施工をすることとした。また、運転開始後の維持管理に関しても事前に入念な検討を行った。自分が検討・設計を行った構造物を、現場で形にしていく。渡邉に求められる役割は多様だが、本人はそのことをどう感じているのだろうか。
「難しさはありますが、だからこそやりがいもあります。計画、設計、施工などの業務に一貫して関われることが、中部電力の土木業務の特徴です。他にも私は今、黒川に設けられる大平黒川えん堤の配筋計算を行っています。想定される応力に耐えられる構造物とするため、コンクリートの中にどういう大きさの鉄筋をどれくらいのピッチで入れるのか。そういう計算を行い、設計に反映させていきます。悩みながら自分の手を動かした結果、一つの構造物ができる。そこにやりがいを感じます」(渡邉)

若手が活躍するからこそ、ノウハウが蓄積されていく。

新しいことへの挑戦を後押しし、若手にチャンスを与える職場の風土。その中で試行錯誤を繰り返しながら社員たちが成長し、企業としてのノウハウが蓄積されていく。
2022年の運転開始、その先の安定稼働をイメージしながら現場を見守るのが、発電所の保守業務を担当する三沢剛だ。三沢の部署では現在、南信地域を南北2つに分けたエリアのうち、南側13か所の発電所を担当。清内路水力発電所が完成すると、担当する発電所は14か所になる。

「運転開始後の設備の維持管理を行うのが、私たち保守部署の役割です。設備の形状や水の流れ方、えん堤での砂のたまり方、雨が降った時の水の出方などを発電所ごとに把握して、設備の保守に活かしていきます。管轄する発電所を定期的に巡視するほか、3年に一度ほどの割合で発電所の水路の水を全部抜き、目視や打音(ハンマーなどでコンクリートを叩いて、異常の有無・進行性を確認)などによる点検も行います。新設の発電所を担当させていただく機会はなかなかないので、私たちとしてもやりがいを感じます。『やってやろう』と、昂るものがあります」(三沢)

STORY 04

再生可能エネルギーの拡大に
貢献していく

100年先の未来に向けた想い。

三沢は、清内路水力発電所が建設される阿智村の出身。発電所の維持管理を担う技術者として、また地域の将来を見守る者の一人として、清内路水力発電所の今後をどう考えているのだろうか。

「当社が管理する水力発電所の中には、建設から100年以上安全に使われている発電所があります。大切にメンテナンスしていけば、それだけ長く発電所を使えるということです。清内路水力発電所をこの先100年、200年使っていくための礎づくり。それが保守担当である私の使命だと思っています。私たちが行った維持管理の方法が基準となり、後に続く人たちが様々な方法を模索していく。その始まりの瞬間に立ち会えることに喜びを感じています」(三沢)

100年先、200年先につながる使命を語る三沢。その言葉を受けて、施工担当の渡邉はこう語る。
「三沢さんの思いに応えていくためには、自分たちが今できる限りの努力をして、壊れない構造物、保守性の高い構造物を作っていく必要があると思います。また、100年先も電気を絶やさずに供給していくことを考えた時、より重要な意味を持つのが、再生可能エネルギーの普及です。そのための最先端の取り組みとして水力発電所の建設に携われることを、とてもうれしく思います」(渡邉)

水力発電で、再生可能エネルギーの拡大に貢献していく。

2022年6月。渡邉が施工を担当したえん堤から水が注がれ、南波が設計・管理を行った設備で発電が行われた瞬間、プロジェクトは一つの到達点を迎えることになる。

「発電所の運転が始まり、電力系統に無事に電気を送ることができた時は、きっと大きな達成感があると思います。ただしそこから先も、私たちの仕事は続きます。私は今、清内路水力発電所以外の場所でも水力発電所の新規開発を担当しています。水力発電は、電気を安定供給していく上でなくてはならないベースロード電源です。クリーンで供給安定性に優れた水力発電を一つでも多く建設し、再生可能エネルギーの拡大に貢献していくことが、私たちの役目だと思っています」(南波)
と南波は意欲を語る。何もなかった場所に、自分たちの手で水力発電所を作る。このプロジェクトを通して培われた経験が、彼らの今後と中部電力の将来に活かされていくことは間違いない。次の時代を見据えた技術者たちの挑戦は続いていく。

※本文中の部署名などの表記は取材当時(2020年1月)のものです。

再生可能エネルギーの開発に注力 再生可能エネルギーの開発に注力
再生可能エネルギー
の開発に注力

中部電力は再生可能エネルギー事業の目標として、2030年頃に200万kW以上の新規開発を実現しようとしています。その一環として進められているのが、清内路水力発電所(最大出力5,600kW)の建設です。発電量は一般家庭8,800世帯分に相当し、年間13,000トンの二酸化炭素削減が見込まれています。当社はエネルギー自給率の向上と温室効果ガスの削減に貢献するために、今後も積極的に再生可能エネルギーの開発に取り組んでいきます。