[ PROJECT 01 ]

いくつもの壁を越え、
電力を届ける。
すべては、リニア新幹線を走らせるために。

2027年の開通(品川・名古屋間)をめざして工事が進められている、リニア中央新幹線。この国家プロジェクトの一翼を担って電力の供給を行うのが、中部電力です。大きな役割を担って業務に取り組む、5名の社員の姿をご紹介します。

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PROJECT MEMBER

    • 中部電力パワーグリッド株式会社 本社 送変電技術センター リニア関連 変電工事課

    堀川 俊成

    • 1994年入社
    • 商業科 卒業
    • 中部電力パワーグリッド株式会社 本社 送変電技術センター リニア関連 変電工事課

    深谷 正俊

    • 1998年入社
    • 工学研究科 土木建設工学専攻 卒業
    • 中部電力パワーグリッド株式会社 本社 送変電技術センター 変電施設課

    平野 敬祐

    • 2013年入社
    • 工学研究科 環境エネルギーシステム専攻 卒業
    • 中部電力パワーグリッド株式会社 本社 送変電技術センター リニア関連 送電工事課

    棚瀬 貴弘

    • 2011年入社
    • 工学系研究科 電気電子工学専攻 卒業
    • 中部電力パワーグリッド株式会社 長野支社 飯田営業所 配電建設課

    野堀 匠麻

    • 2015年入社
    • 制御情報工学科 卒業
STORY 01

リニア新幹線を動かすために、
変電所を新設する

「リニアの仕事を担当してほしい」

辞令を受けた時は一瞬、事の重大さが分からなかった。平野敬祐が携わることになったのは、2027年に品川・名古屋間が開通する、リニア中央新幹線に関わるプロジェクト。車両の運転や駅で使用される電力、工事に必要な電力を中部電力が供給する。

平野が関わることになったのはその中の、運転用の電気供給に関する業務。岐阜県恵那市と長野県豊丘村の2か所に、新たな変電所を建設することになった。

「従来の新幹線への電力供給は、既存の変電所から賄うことができますが、リニア新幹線の場合は15万ボルトという高圧の運転用電源を専用で設ける必要があります。そのために今回新設するのが、岐阜県と長野県の2つの変電所です。送電線から分岐した50万ボルトの電力を変電所で15万ボルトに変圧した後、電力を供給します。」(平野)

送変電部門の技術者として平野が担当するのは、変電所の設計や変電機器の発注、施工管理などの業務である。変電所の設備レイアウトを決める際に主導的な役割を果たす、きわめて重要な仕事だ。

「自分の役割が見えてくるにつれ、重要なプロジェクトに関わる実感が湧いてきました。私が設計やレイアウトを行う立場ですが、それ以前の段階で多く人がこのプロジェクトに関わっています。その人たちが積み重ねてきたものに応えたいと思いました」(平野)

では実際に、これまでどのような部門の担当者がこのプロジェクトに関わってきたのか。数年前までさかのぼって流れを振り返ってみたい。

STORY 02

地域住民の不安を
取り除くために

変電所などを建設する際にまず必要となるのが、事前に行われる現場調査である。地元に対して申し入れを行い、説明会などを開いて立ち入り調査の了解を得る。その役割を担ったのが、本プロジェクトの土木部門を統括する深谷正俊。土木部門として敷地の造成などを行うために、まず「土地に入ること」の理解を得るところから始める必要があった。

「調査のお願いにうかがったものの、地元の方からは当初、『近くに変電所ができるのは不安』『工事車両がたくさん通るのが怖い』といった声が多く寄せられました。私自身、そうした場で説明を行うのは初めての経験だったので、最初は落ち込んだ記憶があります。了解を得るまではとても苦労しました」(深谷)

逆風から始まった地元説明会。しかし、地元住民が自分たちの住む地域での工事に不安を抱くのは当然のことであるとも言える。深谷は気持ちを切り替えて、再度説明に臨むことにした。この建設場所を選んだ理由や工事の流れ、電磁界や騒音の実測結果、車両台数などに至るまで、具体的な情報を分かりやすく伝えられるよう、関係部署のメンバーと内容を練り直した。

「そのようにして2回、3回と説明の機会を設けるうちに、少しずつ話を聞いていただけるようになりました。誠心誠意向き合うことによって、次のステップにつなげることができたと思います」(深谷)

STORY 03

仕事の結果が、
一つひとつ地図に
記されていく

工事の準備段階で地元をめぐったのは、深谷たち土木部門のメンバーだけではない。用地課の堀川俊成も、同様の苦労を味わっていた。堀川たちが担当するのは、電力設備を建設するために必要な用地手配の業務。送電設備を建設するための土地買収や送電線を架線するための承諾・権利確保に向け、土地所有者との交渉を行った。

「私が携わっているのは、長野県内に建設される変電所と送電線3線路の用地取得です。土地所有者の方に土地を譲っていただくことが私たちの役割ですが、もちろんそれは簡単なことではありません。地元に足を運んで説明を行い、土地所有者の方との信頼関係を築くことが必要になります。何度も顔を合わせて話をする。そういう機会を作るところから始めました」(堀川)

堀川が担当するのは、社内外の関係者との調整業務や工事着手に向けた工程管理の業務。土地所有者との交渉を行う担当者をサポートし、思うように交渉が進まない時はアドバイスをする。そうして部署全体で難しい状況を乗り越えた時が、この仕事を通じて手応えを感じる瞬間だという。

「長いプロセスを経て、地図の中に中部電力の土地を書き込むことが、私たちの仕事のゴールです。計画されたルートに送電線を通すために、地道に土地所有者の方との関係を築いていく。それが私たち“用地屋”の使命だと思っています」(堀川)

その後を受けて行われるのが、深谷たち土木部門による敷地の造成工事である。山を造成して変電所を建てるための平場を生み出す。事前の調査や設計を経て敷地の造成が行われ、変電機器を設置するための基礎工事が進められていく。また、変電所の建設と並行して行われるのが、送電設備の建設だ。

STORY 04

「かすり傷ひとつ生まない現場管理」
を実現する

今回新設される送電設備の設計や工事の現場管理などを行うのが、送変電部門の棚瀬貴弘である。

「私は、既設の50万ボルト送電線を分岐させて当社の変電所に接続し、さらに降圧された15万ボルトの電力を送る送電設備の設計・建設を担当しています。約20基の鉄塔建設を担当し、リレーされてきた電気を最後にお客さまのもとへお届けすることが、私の仕事です。」(棚瀬)

このプロジェクトで建設される50万ボルトの分岐鉄塔は、中部電力として数例しか前例のない設備である。参考にできる情報が限られる中で棚瀬は、過去に大規模案件を手がけた経験のある先輩などから様々なアドバイスやサポートをもらいながら、設備設計を行った。前例のない大型の鉄塔の設計を行うため、立体解析という解析を用いる必要があるが、それには相応の手間と時間、コストがかかる。そこで、過去の資料などを読み漁り、先輩からのアドバイスや技術検討部署との協議をもとに試行錯誤を繰り返すことで、合理的な解析手法を考案し、コストダウンを成功させた。また棚瀬は、そうした設計最適化の取り組みとともに、現場管理の業務にもこだわりを注いでいる。

「私がめざすのは、作業員の方がかすり傷ひとつなく工事を終えられるような現場管理です。現場において危険の芽を摘むためには、作業員の方とのコミュニケーションが重要になります。『ちょっと危ないな』と思うことや思い込みによる確認不足などを放っておいた結果、災害を招いてしまうことがあります。それを防ぐためには、作業員の方が気づいたことや現場で困っていることなどを何でも話してもらい、一緒により良い現場を作っていくための信頼関係を築くことが必要です。そのため、積極的に現場へ赴き、コミュニケーションをとるようにしています。」(棚瀬)

STORY 05

電気を利用者に
確実に届けるという
覚悟と使命感を持って挑む
配電業務

一方、2027年の開通をめざしてリニア中央新幹線の建設工事も着々と進められている。トンネル掘削などの工事に使用されるのが、中部電力が供給する工事用電源である。その供給を担うのが、配電部門の野堀匠麻だ。

野堀が担当するのは、安全な電力を遅延なく届けるための、配電設備の設計業務。受電場所は既存の配電設備から何キロも離れているため、建設工事は大規模なものになる。

「山間地に数十、数百という電柱を立てて、そこに6,600ボルトの高圧線を張っていきます。電柱を立てさせていただくための調整を行うことも、私たちの仕事です。希望の期日までに電気をお届けできない場合、掘削工事に遅れが生じることになります。その責任を感じながらプロジェクトに取り組んでいます」(野堀)

配電業務とは、電気を届けるプロセスの中でも利用者にもっとも近い仕事。街の中においては、電柱を1本ずつ立てて電気を送り、利用者のニーズにきめ細かく応える。一方、今回のプロジェクトは一般的な配電業務に比べてはるかにスケールが大きく、工事期間も長い。常に状況が変化する中で官庁への申請や施工会社との調整などを進めていく難しさがあるが、その難しさの中にやりがいがあると野堀は言う。

「さまざまな調整を行いながら電柱を立て、何年にもわたる準備を経て無事に電気を届けられた時は、大きな達成感があると思います。どれだけ大変でも、完成に向けて自分の責任を果たしていきます」(野堀)

そう語る野堀の口調から、覚悟の強さが伝わってきた。

STORY 06

前例なき挑戦が、
未来のカタチになっていく

前例のないことに取り組むことの難しさ。それを強く感じているのが、変電所の設計を担当する平野だ。50万ボルトの変電所を新設すること自体が珍しい上、敷地形状などの条件も変電所によってすべて異なる。そんな中、施工性や保守性が高くコストを抑えた設備をどのように設計するのか。「こうすれば最適なレイアウトになる」という正解がない中で、土木や建築、送電の担当部署などの意見を聞きながら着地点を見つける難しさがある。検討を重ね、本館建屋や送電線引留鉄構の位置を当初計画から変更し、現状考えられる最小限のレベルまでコストを抑えた。

「用地担当の方たちが土地を取得し、その土地に土木部門の方たちが造成を行う。その上でようやく私たちが変電所を建てることができます。また今回、変電機器のメーカーさんにも、輸送や工期の短縮につながる新技術を提案していただいています。さまざまな人たちの力によって進められているのが、今回のプロジェクトです。最後まで責任を持って仕上げたいと思います」(平野)

変電所や送電線の建設が終わって電気が届くのは、2024年頃。そして2027年にはついに、品川・名古屋間でリニア中央新幹線の運行が始まる。プロジェクトに携わったメンバーたちは、そのゴールをどんな気持ちで迎えるのだろうか。深谷は、数年先をこうイメージする。

「変電所ができた時も感動すると思いますが、おそらくそれ以上の喜びを感じるのは、リニア新幹線に初めて乗った時だと思います。自分たちが送った電力でリニア新幹線が走っている。それを実感できた時は、苦労して地元の方に説明を行った時のことなど、さまざまな思い出が蘇ってくると思います。そこに至るまでは苦労の連続ですが、最後に喜びを味わえる瞬間が来ます。一人で黙って感動に浸る時間を持ちたいと思います」(深谷)

プロジェクトは現在、用地交渉から工事の段階に移り、変電所の土木工事や送電設備の基礎工事が進んでいる。この先さらに建設工事が進むと、変電所や送電設備の全体像が少しずつ見えてくるだろう。送電担当の棚瀬は、その成果を自分の目で確かめる瞬間を心待ちにしている。

「子供と一緒にリニア新幹線に乗って長野に行き、できれば送電の現場まで行って鉄塔を見せたいですね。『お父さんの作った鉄塔で送った電気がリニアを動かしているんだよ』と子供に話せる日を楽しみにしています」(棚瀬)

※本文中の部署名などの表記は取材当時(2020年1月)のものです。

リニア中央新幹線と中部電力 リニア中央新幹線と中部電力
リニア中央新幹線と中部電力

リニア中央新幹線の最高時速は、500km。車両に搭載された超電導磁石と地上コイルの間の磁力によって車両を浮上させ、超高速で走行します。品川・名古屋間の開業予定は、2027年。車両の運転や各県の駅、工事のために必要な電力を、中部電力が供給します。
(参考:JR東海:リニア中央新幹線サイト)